建設業の許可は、一度「許可」を取得すれば、その後は何もしなくても許可を維持することができるというものではありません。
建設業許可は5年毎に更新手続きをしなければならず、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)などの建設業業法で規定されている事項について変更が生じたときは、その変更届を行うことが義務付けられています。また、変更届の提出期間についても、その発生して事項の重要度によって別々に定められています。
建設業許可を取得した後に、行わなければならない手続きを確認することは、建設業の営業の根幹となる「許可」を維持していくうえでも重要なことなのです。
建設業許可を取得した後の手続きの種類
☑ 許可の更新:5年ごとの許可更新手続き
☑ 変更届:経営業務の管理責任者(経管)の変更、専任技術者(専技)の変更、営業所に関する変更など
☑ 決算変更届:毎年の決算期後に行う手続き
☑ 業種の追加:許可業種を増やす手続き
☑ 般特新規:一般許可⇔特定許可の変更
☑ 許可換え新規:大臣許可⇔知事許可、A県知事許可⇔B県知事許可
☑ 廃業届:全業種の廃業、一部業種の廃業
許可の更新
建設業許可の有効期間は「5年」です。建設業者が継続して許可を維持していくためには、5年ごとに更新の申請手続きをしなければならないのです。
更新の申請は、窓口ごとに定められている受付の開始日から有効期限の30日前までの間に完了していかなければならないとされています。有効期間の「30日前まで」 に建設業許可の更新手続きを申請することを要求されている理由は、有効期間の満了日に新たな許可通知書を取得するための手続きの期間が必要だからです。
もっとも、有効期間の30日前を経過しても、許可の有効期間が満了する日までならば更新の申請書は受理されます。この場合、許可の有効期間満了直後には新たな許可通知書を取得できない可能性がありますが、これは許可の空白期間が生じるわけではなく、新たな許可や不許可が決まるまでは、一応は従前の許可が有効であるという取扱いがなされます。
ただし、許可の有効期間を1日でも過ぎた場合ば、更新の申請書は一切受け付けてもらえないため、改めて新規の許可申請を行うしかありません。この場合、許可を再取得するまでは、建築一式工事なら1,500円以上、建築一式以外なら500万円以上の工事は請け負うことはできませんし、新規での許可取得になりますので更新申請に比べて費用も時間もかかってしまうことになります。
また、知事許可については有効期間満了日の30日前までに申請を行えばよいのですが、大臣許可の場合は更新のための標準処理期間が90日とされていますので、有効期間が満了する日のおおよそ3ヶ月前までに更新の申請書を提出しておく必要があります。
変更届
建設業許可を取得している建設業者は、許可を受けた内容に変更が生じた場合は、それぞれ法律に定められた期間内に、変更届を許可行政庁に届け出なければなりません。
これらの変更届がきちんと行われていないと、更新の申請が受理されません。更新の申請が受理されるのは、変更届がきちんと届け出ているとが前提となるのです。そのため、どのような事実が発生したときに届出が必要になるのかを把握しておくことが重要です。役員変更や営業所の移転をする際は事前に行政書士に相談することをおすすめします。
また、これらの届出ができていないと経営事項審査を受けられなかったり、審査の段階で補正指示が出され、補正ができるまでは審査が通らなくなったりします。その結果、総合評定値通知書の期限が切れてしまい公共工事の入札に参加できなくなる場合もありますので注意しましょう。
建設業許可の変更届は、許可要件に関するものや、建設業者が公共工事の入札に参加する際のランク付けに影響するものなどがありますが、総じて建設業者の経営に大きな影響を及ぼす可能性が高いといえます。
許可要件に関する変更届の代表といえば、経営業務の管理責任者(経管)に関する変更届でしょう。経営業務の管理責任者(経管)は要件を満たすことが難しい「人についての要件」ですが、この経営業務の管理責任者(経管)が交代する場合には慎重に後任者を選ぶ必要があります。
よくあるパターンとして、取締役の人事異動を先にしてしまい役員登記まで外してしまっているパターンです。この場合、後任者として要件を満たす経営業務の管理責任者(経管)が前任の経営業務の管理責任者(経管)退任時にすでに同じ会社に常勤しているならば、その後任者を経営業務の管理責任者(経管)として変更届を提出することは可能ですが、そのような後任者として要件を満たす経営業務の管理責任者(経管)がいないのであれば、許可の要件を満たさなくなってしまいます。
経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)の存在は建設業許可の要件であり、その不在は「即」許可取消しとなってしまうのです。許可取消処分を受けないためにも、常に許可要件を意識した経営が必要となるのです。そのため、建設業者さんは建設業許可に詳しい行政書士を経営参謀として利用するべきだといえるのです。
また、許可取消処分にまで至らない場合であっても、変更届の未提出や提出期限を遅れた場合には処罰の対象となりえます。罰則と適用されると信用問題にもなりますし、経営事項審査(経審)での減点や入札での指名願いの取下げとなってしまったり、様々な不利益を蒙ることになってしまいます。
許可換え
許可換えには「一般建設業許可→特定建設業許可」または「特定建設業許可→一般建設業許可」へ変更する場合の「般特新規」と、許可行政庁を変更する場合の「許可換え新規」があります。
般特新規
一般建設業の許可業者が特定建設業の許可業者になる場合には、改めて新規申請を行いますが、「特定」許可の要件を満たしていることが必要になります。また、逆に「特定」許可の財産要件などが満たせず、やむなく特定許可から一般許可へ移行する場合にも、改めて一般建設業への般特新規申請となります。
<般特新規申請のメリットと留意点>
☑ 特定建設業許可を取得するには、原則として1級の技術者を専任技術者にしたうえで、特定建設業許可の厳しい財産的要件を充足させなければならない。この財産的要件は業種追加や更新時にも求められる。
☑ 特定建設業許可を取得すれば、元請として大規模な工事に従事できるので、特定建設業許可の要件を維持できるのであれば、経営戦略としても非常に有意義な許可であるといえる。
☑ 官公庁の発注価格のランク付けにおいても、上位ランクは「特定」の許可業者という要件がつけられている場合もあるので、企業のランクアップとしての方法として有効である。
許可換え新規
知事許可業者が都道府県をまたいで移転したときは、「許可換え新規」の申請を行います。また、知事許可業者が複数の都道府県にまたがる営業所を設置したときは、大臣許可への「許可換え新規」の申請を行います。
<許可換え新規のメリットと留意点>
☑ 多くの地方公共団体では、本店または営業所が管内にある建設業者を優遇して指名する傾向があり、知事許可から大臣許可への許可換えは、入札参加資格申請において有利な立場にたてる。
☑ 大臣許可への許可換えを行い、公共工事の受注を目指す地域に営業所を構えることは、営業戦略として非常に有意義である。
☑ 大臣許可を維持するためには、各営業所に専任技術者と主任技術者(監理技術者)が常時必要となる。そのため、継続的な人材確保が見込める程度の企業規模になってから許可換えするのが望ましい。
上記のように建設業の「許可」は、取得後も様々な手続きが必要になってきます。あいまいな認識と手続きでは苦労して取得した許可を手放さなければならなくなったり取り消されてしまうこともあるのです。そうなれば、建設業者としての信用面の問題となりますし、なによりも許可を必要とするレベルの建設工事を請負えなくなってしまいます。
北大阪建設業許可サポートオフィスは、建設業の許可取得後の手続きにも対応しております。苦労して取得した「許可」を失わないためにも、北大阪建設業許可サポートオフィスへお問合せください。電話:072-807-7530(行政書士向井総合法務事務所)